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「産学連携」の黎明期、まだそのシステムが確立していなかった時期から、瀬田へのキャンパス設置を契機として、広く社会への貢献を進めてきた龍谷大学。エクステンションセンターの設置、コーディネーター制度の導入等、国としての助成制度等が整備されていないなかで、「ミッション」を実現するとの一心から他に先駆けて採り入れてきた枠組みは少なくない。
この「本気の取組み」が多くの実績を産み、また現時点で言われている産学連携の課題を克服する原動力になっている。
今回、龍谷大学が求める企業は「本業が壁に突き当たりつつある企業」。「本気の産学連携」が、その突破口を開く。
龍谷大学さんに、インタビューを行いました!
【インタビュー】
和田 隆博(龍谷エクステンションセンター(REC)長/知的財産センター副センター長/理工学部教授/工学博士)・笹岡 晃治(龍谷エクステンションセンター(REC)産学連携コーディネーター)(敬称略)

和田さん:龍谷大学は91年にこの瀬田キャンパスに理工学部を設置したのですが、そのときに滋賀県大津市より「地域の為になることを是非ともやって欲しい」という要請を受けました。
そこで、その具体化として
ひとつは公開講座を滋賀で展開することを決め、現在まで続けています。
そしてもう一つは産学連携ということで、この龍谷エクステンションセンターを設置しました。建物も自前で建設し、レンタルラボも置き、そういう意味では本学は非常に早い段階から産学連携に取り組んできたと言えると思います。それが本学の自負でもあります。
取材チーム:一番早くにやられているんじゃないですか?87年に瀬田を開学されてから4年後の91年にエクステンションセンターと。
和田さん:関西では一番早いですね。ただ、「早く始めましたよ」ということ自体には何の意味も無いと思っています。
何が重要であったかと申しますと、我々が初めて大学の敷地の中にレンタルラボを持ったということなんですね。つまり、教員とベンチャー企業のインキュベーションの距離を物理的に近づけたのが早かったと。その当時の文部省のなかにはまだ産学連携という発想は無く、単に「教室で無ければ補助金は出さない」というスタンスだったんです。これでは大学の資金しかあり得ないでしょう。だから本学は自前でこれを設置したわけです。
それから20年、結果として素晴らしい成果が出たかというと、それほど自慢するような「花火」はありません。ただ、そもそも産学連携とはそういう地道なもの、その意味では、徐々にではありますが着実に成果が積みあがっていると思っています。
取材チーム:正に先駆者としてのご苦労があったことだと思います。今やどこの大学さんも研究シーズを実用化する・・・という当初の発想から、もしかしたら企業さんの声にもっと耳を傾けないといけないのではないか・・・という方向に変わってきています。そういう意味では貴学に一日の長があるということだと思います。
ただ、インフラが整って、さあやろうということになっても、なかなか進まない背景には、学内の微妙な力関係のようなものを挙げられる大学さんもいらっしゃいます。
なかなかコーディネーターさんが先生方とうまく繋ぎ合えないとか、先生までご登板頂くとあとから恥をかかせたら困るのでやめておこう・・・といった事例も実際には多くあるようですが、貴学におかれてはその辺りはどのように解決を図っておられますか?

和田さん:非常に根本的な問題ですね。我々も当初はコーディネーターとかフェローを配置していなかったのです。組織があって、建物があって、ミッションがあると。
当初はやはりおっしゃる通りの課題に突き当たりました。熱心な教員はいるけれども、いかんせん教員は教育という大きなミッションがある。そのはざまで教員達はやり方に困っていました。
そんな中で、フェロー、コーディネーターという専門職の人を、経験者ですね、それは教員からなっていく人もあれば、企業の技術を担当した人もあると。そういう人材を配置することで、それをなんとか克服してきました。
本学の場合は、フェロー、コーディネーターに、元々本学の教員であった者と外部の企業から来てもらっている方が混在しているというところに妙味があると考えています。
両者が、少しずつお互いにコミュミケーションが取りながら進めていきます。
これが企業から来た方だけであると企業論理だけのグループが出来てしまうし、特に企業でかなりの地位にいらっしゃった方になってしまうと、「なんで俺の言う事を聞かんのや」みたいなことにもなりかねません。
企業経験者なら誰でも良いというわけではなくて、そこは拘っています。ピラミッドの頂点でマネジメント力を発揮していた方は必要ありません。ここではマネジメント力じゃなくて、本当に実務で仕事をしていくことが必要なので、やる仕事が違うのですよという話を必ず最初にさせていただくようにしています。
また、他の大学さんと違いがあるとすると、本学は「産学連携」という枠組が整備される前にそれをやっていたということかも知れませんね。
その後に、コーディネーターには補助金を出しますよというような制度が出来ていきました。他の大学さんは多分その制度が先にあって、それだったら人を雇えというふうに雇っているのではないでしょうか・・・それでも実際に機能させていこうとすると難しいと思います。
笹岡さん:そういう意味では龍谷大学は早くから産学連携を始めて、自然発生的にコーディネーターやフェローが必要になり・・・ということでここまで歩んできていますから、他と比べると哲学がキッチリしていると思いますね。
取材チーム:さて、そんななかで貴学としての連携の成功事例を幾つかご紹介願えませんか?
和田さん:今年「日本ものづくり大賞」というのがございまして、それに向けてあるベンチャー企業さんが木の服を作りたいとご相談に来られたんですね。色々なところに相談にいったけれどもあまり相手にしてもらえなかったと。それで龍谷大学にたどり着かれたんです。それじゃ本学がサポートしましょうということで、特許出願のサポートから具体的な商品開発、具体的には木の革を使った高級感のある携帯電話や車のシートの商品化を実現して、それが今回の「経済産業省・ものづくり大賞」に認めらました。
また、別の例としては、つまようじの会社で、普通、つまようじは丸いんですけれども、この会社では断面が三角の「三角ようじ」を作っておられました。本当に歯に良いのは三角形の断面のようじらしいのですね。それを大量生産出来る機械を作りたいという相談を持ち込まれて、色々試行錯誤しながら、最終的には作りあげることが出来ました。
いずれも、他の機関ではなかなか克服できなかった課題について、本学が参画することで結果的に克服出来たという意味で、大きな成功事例だと考えています。
大学は垣根が非常に高くてなかなか相談できないよということは良くお伺いする話なのですが、本学の場合は笹岡のようなコーディネーターとか相談員が充実していますので、何でもおっしゃって頂ければと考えています。
先ほどの「ニーズが先か、シーズが先か」というお話ですが、大学のシーズから進めていければベストなのかも知れませんが、実際には大学の研究と一般のビジネスとは非常に高い壁と長い時間的なずれがあると思っています。本学は勿論それも希望しますけども、先ず企業さんの課題があって、それを大学の技術でもってサポートすることで結果として中小企業さんとしての成果に結びついたという形も(地味かも知れませんが)連携のひとつのありようだと思っています。
全てが全てうまくいくとは言いませんけど、長い事やっていますといま申し上げたように実際喜んでいただける事例も出て来ていますし、それこそが少し長くやっていることの実績じゃないかなと思っています。色々と派手にやるというのもやり方としてはあるんですけど(笑)。
そしてこれだけ長い事やってきて思う事は、「これだ!」と思ったものより、「ん?」と思ったものが成功したり(笑)。なかなかこちらの思いと実際の成功というのはまた違いまして。だから全ての課題を我々が解決することは出来ないかもしれないですが、ひと言相談してくれたら、それを本気になって考えて、龍谷エクステンションセンターという産学連携の窓口が責任を持って学内でのマッチングをとるということができると思います。
取材チーム:例えばある本業の商売がなかなかかんばしくない企業さんが、今の本業或いは今お持ちの経営資源、加工技術ですとか材料そのものとか、というものを活かして、他に転じたい、あるいはこれをもっと別の用途開発をしてみたいというようなニーズってかなりあると思います。そこがあればという企業さんは非常に多いと思うんです。そんな企業さんに集まっていただくというのもひとつの考え方かなと。ある意味で突破口を探されている企業さんにお声掛けして、そういう企業オーナーさんに集まっていただくというのは如何でしょう?
和田さん:具体的にお話を伺って、フェロー、コーディネーターが本学として取り込めるのかどうかを判断して繋いでいきます。一度相談してもらえたら、やれるかどうかも含めて検討します。
笹岡 まったく新しいエンタープライズに出て行こうとするとベンチャーと一緒の話になってしまいますので、その会社の持っている技術が、近くのところでなんか新しい展開がないかというのを検討するということですよね。

笹岡さん:まったく新しいエンタープライズに出て行こうとするとベンチャーと一緒の話になってしまいますので、その会社の持っている技術が、近くのところでなんか新しい展開がないかというのを検討するということですよね。
取材チーム:RECホールの1階に連携企業さんの商品をディスプレイされていますよね。びっくりしましたのは、どの企業さんの商品も我々が当たり前に考えている使われ方ではなく、用途などを少しひとひねりされているということなのです。そういうご相談に貴学が乗って頂けるとしたら非常に有難いですね。数を集めるというよりも課題を抱えていらっしゃる企業さんに集まっていただくと。
和田さん:そうですね。ひとつひとつ検討しながら、一緒に考えるというような形が良いんじゃないかと思いますね。
取材チーム:「本業が壁に突き当たっている企業が、その本業によって確立された経営資源を別展開或いは新展開させることによって、突破口を開く」とは、全くゼロから起業することと同等の、もしかしたらより難易度の高いプロセスが要求されます。このニーズを受け止める実績と事業基盤を有し、またそれに対して「本気で」臨むことが既に「ミッション」として学内で共有されていることに「凄み」と深い敬意を覚えます。
「本気の産学連携」・・・共に歩み得る「本気の経営課題」を求めます!