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デザインを技術開発や商品開発に応用し、地域社会に貢献していく芸術「工科」大学として、神戸市や神戸を代表する企業との連携を重ねる神戸芸術工科大学。
関西がひとつになって、全国そしてアジアに向けて発信していく為に、企業と、社会と、共に歩み、共に育っていくこととを大学としての確固たるポリシーとして掲げ、それに向けて邁進している。
神戸芸術工科大学さんに、インタビューを行いました!
【インタビュー】大田 尚作(デザイン学部長/プロダクトデザイン学科主任/教授)・
相良 二朗(大学院総合デザイン専攻主任/プロダクトデザイン学科教授)・河野 和子(事業推進課リーダー)(敬称略)

大田さん:神戸芸術工科大学が主に取り扱っている分野というのはデザインとアートの世界ですが、特にデザインというものは色彩やスタイリング等の外形的な決定だけでは無くて、技術や生産システム・マーケット等にも影響を与える余地のあるものだと考えています。
近年、企業を中心に東京一極集中がどんどん行われていますね。本社機能が集中するということは情報も一極集中化が加速していきます。これはものづくりの世界においても危険な兆候だと思います。つまりMADE IN JAPANの商品を世界に発信していくときに、東京的な、つまり江戸的な美というか「粋」もしくは「理」のテイストを持った商品を世界に発信していくという必要性と同時に、「雅」もしくは「情」のテイストを持った商品発信も重要であると考えています。この両方のテイストを有した商品がバランス良く我が国から発信されて始めてMADE IN JAPANの信頼性が世界で定着していくように思います。特に30億のアジアという市場を視野に商品展開を図っていくとすれば、MADE IN JAPANの信頼性を背景にした関西風のテイストを持ったものづくりの戦略が不可欠であると考えています。
それは東京からでは無く関西から発信する義務のあるものですし、逆に言えばそれができるエリアが関西なのだと思います。アジアのコアになるような情報発信基地の設立も含めて、関西というエリア全体で考え発信していきましょう・・・というのが私の基本的な考えです。東京と関西とが異なったテイストを発信していく、こういうグローバルな視点に立った戦略を国策として構築していく必要性が緊急に求められているのではないでしょうか。色々な会合や講演で繰り返し言ってるんですけどね(笑)。
取材チーム:恐らくクリエイションコア東大阪という施設はそういうことを目指して作られた施設なのだと思います。
そういった流れを加速化させていくなかで、今度は若干ミクロにフォーカスしていったときに、じゃあ何が出来ていくのか、みたいなことを今回考えたわけなのです。先ずは参加されている大学さんと一緒に何が出来るのかっていうことを、企業さんも大阪府さんも我々金融機関も改めて再確認していこうと。
そこで貴学についてということになるわけですが、貴学は神戸芸術「工科」大学さんなのですよね。神戸芸術大学じゃなくて、神戸芸術「工科」大学さんであるということが、貴学のひとつの大きな特色なのだろうと考えているのですが。
相良さん:工学系の技術を、いかに人が使うものに転嫁していくかっていうのが我々の仕事なのでしょうね。
大田さん:新鮮な学生の作品をいかに商品に仕立てていくか。難しい課題ですが作品と商品の違いを明らかにしていくことがデザイン教育といえるのかも知れませんね。そのためには生きた教育を体験し、そこで培われたノウハウを蓄積し提供していくことが重要だと思います。
取材チーム:プロダクトのブランディングとかコピーライティングのようなことだけでは無くて、技術を実用化して、BtoCで本当に使えるようにしていくということをご支援して頂けるということですね。
相良さん:特にプロダクトについてはそういうことです。ビジュアルになると次のアプリケーションのところの仕事になっていくとは思いますが。

取材チーム:我々金融機関に対しては、今度こういう事業をするので半年後くらいにお金が要るから憶えといてよ・・・みたいな話をよく頂くんです。
今まではBtoBしかしていなかったけれど、今度は商品をホームセンターなんかで直接売ろうと思っていると。そんなこと初めてなのでどういう風に商品開発をしたらわからないというような話も当然あるのですね。そこのところで貴学に入って頂ければ、その企業さんにとってリスクの少ない商品開発ができるわけですね。
大田さん:デザインの総合大学ということですから、これまでに各専門領域間のノウハウは蓄積されつつあると自負しています。これからは、蓄積された個々のノウハウをいかに連携して新しいものづくりやことづくりに生かしていけるかが重要でしょうね。地域還元を目指している大学として、求められる期待に私たちが応えていく義務もあると考えています。
取材チーム:商品の共同開発もされておられますし、地域の再開発、所謂まちづくりでも連携されておられますね。商店街活性化に代表されるような地域連携も・・・デザインを武器にして、でもデザインだけをされているわけじゃないのですね。まさに工科大学なのですね。
大田さん:これらの取り組みを俯瞰し一言で言うと、「ものづくり」から「ことづくり」までということでしょう。ひとつのプロダクトを具体化していくにしても、学科を超えた多くの人達の協力体制が重要で、その仕組みづくりも重要なデザイン作業ですね。
取材チーム:個別の連携PJについてはどなたかプロデューサーがおられるのですか?
大田さん:本学には芸術工学研究所という窓口があります。そこがゲートとなって企業や行政からのニーズをお聞きし、対応処方についての最適な組織編成が検討されるといった仕組みができています。
取材チーム:そのゲートに立たれる方が、学内では先生にまったく何もよう言わんみたいなお話をよく伺うのですが・・・(笑)。例えばこのプロジェクトなら本当はあの先生が最適任なのだけれど、あの先生にはちょっとよう言いませんとなって、結局何か虫食いプロジェクトみたいことになってしまうこともあるとお伺いするのですが(笑)
大田さん:まあ本学の場合もゼロとは言いませんけど、やっぱりデザインという共通のプラット・フォームがありますからね。元々デザイン開発作業に携わろうという人達はチーム遂行型人間が多いのではないでしょうか。
取材チーム:次に、具体的なイメージですけれども、今持っている技術を活かして、BtoCとまではいかなくても、ある意味自立して自分でコントロールしたいという企業ニーズって、非常に今日的で数多いと思うのですが、それが成功の確率はそんなに高いものでは無いと思っています。
企業さんとの連携において、じゃあこれで行きましょうとプロジェクトを立ち上げて進んで行くというケースと、いやもう一回考えましょうというケースって当然出てくると思うんですね。
つまり、失敗事例というか、企業さんとしてのオリジナルの企画自体がなかなか経済的にも成功しにくいという側面はあると思うのですね。

相良さん:頂いたご相談を全部受けているわけでも無いですからね。入り口のところでお断りするということもありますね。
ただ元々新規の商品開発の場合は期待値が大きいのです。当初の販売予測に比べると、目標値には到達していないことの方が実際には多いのではないでしょうか。
ただ、そういう試行錯誤の経験値を積んでいくということも、これはこれで商品開発の進め方に関するひとつのノウハウだと思うんですね。
単純にそのひとつのプロダクトをみて、5000万払ったけど3000万しか売れなかった、だから失敗だという短絡的な考え方をされると、そういった連携は難しいと思いますね。
よくありますけどね、任せておいたらものすごく売り上げがあがるし、すごいものができるだろうという期待が。そんなものはうまくいくはずはないです(笑)。単年度でものが完結して、成功まで結果が出るっていうのは先ず無いですよね。
取材チーム:そこを企業さんは期待されていると思うのですが。
大田さん:期待は大きいでしょうね。こういうご時世ですから早く結果を出したいでしょうね。
取材チーム:多くの社長さんは多分いま一日中それを考えてらっしゃると思います。
大田さん:先ほども申し上げましたが、デザイン作業というものを、発案から商品化までの一連の流れと解釈すれば、短期的に結果を出そうという事自体がやっぱり無理があるのは事実です。これは依頼者へのお願いということにもなりますが、やはりデザイン=スタイリングという解釈ではなく、川上から川下までをデザイン作業であるとの認識を持っていただくことが大切であり、成功率アップの鍵に繋がっていくものと思います。大学としてデザイン領域の川上からお手伝いできれば良いと思っています。文科省関連の補助金制度や各種融資制度の利用について企業の方々にアドバイスを差し上げたり、大学の資金も活用頂きながら開発していくというケースも考えられないわけではありません。加えて、メディア等への発信力という観点でも一企業でおこなうよりは大きな効果が出るかも知れません。例えば開発商品に対しても産学官連携等のクレジットを入れることも可能ですから。
銀行も一緒だと思いますが、共存共栄の精神、そういうことですよね。お互いに良くならないといけないし、また育つってことは時間がかかるということも認識しなくちゃいけない。
昨秋、神戸市はユネスコからデザイン都市神戸の認定を受けました。私たち神戸市民は暮らし方のデザインっていうのでしょうか、朝起きて学校へ行き仕事をこなし再び床にはいるまで、日々の暮らしの中で関わる物や人、建物や空間との関係についてデザインというキーワードを介在させて暮らしてみる試みを始めています。そんな意識を持って暮らしていくことが、既に生じているさまざまな問題についての解決策や、これから生じるであろう問題についての解決の糸口を見つけやすくする環境が培われていくのではないでしょうか。
取材チーム:「デザイン」「アート」と聞くと、それだけで敬遠する企業も多いかも知れません。しかしながら、神戸芸術工科大学が実際に進めている活動は、「デザイン」「アート」という言葉が一般にイメージされているそれでは無く、現場に密着した、ある意味泥臭く地道なプロセスです。
様々なモノ・コトを、より使い易く、より分かり易くするための「デザイン」。神戸芸術工科大学の活動には、一貫したメッセージが横串を差しています。